学府について

半猟半教を目指して
安田 章人 包括的東アジア・日本研究コース
基幹教育院・人文社会科学部門

 2024年4月より地球社会統合科学府の担当になります、安田章人と申します。よろしくお願いいたします。「専門は?」と聞かれると、「環境社会学と地域研究です」と言ってきましたが、最近は、「狩猟学です」と答えるほうが多くなってきました。というのも、ディシプリンにとらわれず、人が他の動物の命を奪うという象徴的な活動である狩猟に関することであれば、なんでも手を付けるようになってしまったためです。

 

 幼少のころから家で犬を飼っていたことや、自然豊かなカナダに住んでいたことが引き金になったのか、私はずっと動物好きでした。そのため、将来は動物園の飼育員や野生動物を護る国立公園のレンジャー、野生動物の生態を研究する学者になりたいと夢を描いてきました。しかし、東京農工大学農学部に入った際に、環境社会学の第一人者の鬼頭秀一先生に出会い、「動物を護ることってなんやねん」(関西人です)という根本的な問いにぶつかり、野生動物保護を社会科学的に考える道へ進んできました。さらに、海外で研究することの憧れから、大学院では、アフリカでのフィールドワークを必須とする京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科アフリカ地域研究専攻に入学しました。その後、学振PDや非常勤講師を経て、九州大学に赴任しました。

 

 そんな私の研究テーマは、「狩猟を通して考える、人と動物の共存関係の構築」というもので、国内では有害鳥獣捕獲や一般狩猟、海外では娯楽のための狩猟であるスポーツハンティングに注目し、北海道や福岡、アフリカのカメルーン、ハワイをメインフィールドとし、調査研究をおこなってきました。深刻化する国内の野生鳥獣問題や、観光活動であるスポーツハンティングと地域社会の関係を目の当たりにして、「持続可能性とはなにか?」と考え、「娯楽のために動物を殺すなんて残酷だ」という声を直接耳にして、「命を奪うとはなにか?」を考えてきました。

 

 とはいえ、考えてもわかることは少ないです。やってみなければ。ということで、2012年に私も狩猟者となりました。銃と罠を使い、イノシシやシカ、カモ類を狩猟するほか、所属する猟友会では、有害鳥獣捕獲捕獲隊にも入り、1年を通して、狩猟をおこなっています。そんな私が、100haもの緑地が残され、イノシシが生息する伊都キャンパスに赴任できたことは、天啓と言わずして、なんと言いましょうか。大学内では、箱罠を使ってイノシシを捕獲しています。2014年に九州大学狩猟研究会という大学公認サークルも立ち上げ、伊都キャンパスのイノシシを捕獲し、学生とともに解体消費することで、命とはなにかを、頭だけではなく、五感を通して考えています。

 

 こうした経験を、地球社会統合科学府での活動に生かしていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 

 

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